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人体の不思議、元素とホルモンバランスの神秘

監修:皮膚科専門医 岩本麻奈先生

有機物と無機物の集合体である身体の構成成分には善も悪もないというのが、私の持論。その点、森羅万象と同じです。その時々の身体のコンディションによって善に傾くこともあれば、身体に悪影響をもたらすこともあると考えるほうが正しいと思います。すべては、バランスの問題なのです。

たとえば人体の構成には、微量元素が欠かせないとされています。微量元素とは、オリゴエレメントともいい体内に微量に存在するミネラルのこと。当然、その中には母なる海にも含まれているヒ素、水銀、カドミウム、セレンなどの元素も含まれます。これらの元素には有毒性があります。ミステリー小説などに登場する毒物というイメージのほうが、先行するかもしれませんね。ところがこれらの元素、たしかに多く摂取すると毒になりますが、といってまったく摂らないと生体機能に支障が出てくるものもあるのです。抗酸化物質にまで昇格したセレンがいい例でしょう。

実は、体内の血液の55%を占める液体成分、血漿(けっしょう)は、海の成分と非常に類似しているといわれています。生命は38億年前(±3億年)に海から誕生したとされていますから、私たちは自分の身体の中に海(血漿)を抱くことで陸の生活を担保されたのかもしれません。ミネラル成分が身体にとって必要な成分であると同時に、「微量の毒さえ妙薬なり」なのだと思います。体内に必要ないものは、もともと存在するはずがありません。人間の身体とは、神秘のバランスで成り立っているのです。

さて、美肌を保つのに、宿敵のような扱いをされている男性ホルモン。皮脂の分泌をうながすことから大人ニキビの要因のように思われていますが、実は女性にとっても必要不可欠なホルモンです。

女性の体内でつくられる男性ホルモン量は男性の約10分の1といわれていますが、実は女性ホルモンの量に比べると、約10倍以上、女性の身体の中に存在しているのです。というのも女性ホルモンは、女性の体内で一生の間にティースプーン1杯程度しかつくられないからです。女性の体内では、女性ホルモンのほうが男性ホルモンより多いと思っていた方もいらっしゃるのではありませんか? そもそも女性ホルモンは男性ホルモンが代謝されてできたものです。

男性ホルモンは皮脂の分泌をうながしバリア機能をサポートしているだけでなく、体内のたんぱく質を筋肉や内臓組織に変えたり、骨量を維持する働きをしています。意欲や記憶力の活性化にも欠かせません。肌に関していえば、真皮や皮下組織を厚くし外界から守るなど、女性ホルモンとペアを組んで美肌づくりに貢献しているのです。大人ニキビなど、皮脂の過剰分泌は、男性ホルモンだけのしわざではありません。

男性ホルモンと女性ホルモン、体内のホルモンバランスの崩れこそが要因なのです。

岩本麻奈

東京女子医科大学卒。慶應義塾大学医学部皮膚科教室の研修後、市中病院勤務を経てフランスへ。現在、フランス、日本、ASEAN諸国をベースに、人・健康、生活スタイルに関する情報を収集し、独自の視点を交えて発信している。
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