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『椎葉民族芸能博物館』で学ぼう。椎葉村の伝統的な慣習

椎葉民族芸能博物館

周囲を険しい山々に囲まれた宮崎県椎葉村。
村全体の96%が森林という自然環境を生き抜くため、焼畑農業や狩猟文化など独自の風習や伝統を育んできました。
そうした椎葉村の生活文化を伝えているのが、椎葉民族芸能博物館です。

同館職員の椎葉智成さんは、こう話してくれました。
「椎葉村の行事や習わしを春夏秋冬に分けて展示しています。
館内をぐるっと回れば、椎葉村の一年の暮らしを体験できますよ。」

館内には狩猟や焼畑、お茶栽培などの山仕事の道具、祭りに使う装飾品や楽器などを展示。
その一つひとつに先人の知恵や山への感謝の気持ちが込められ、自然と共存する生き方を肌で感じることができます。

椎葉民族芸能博物館(しいばみんぞくげいのうはくぶつかん)

住所  :宮崎県東臼杵郡椎葉村大字下福良1822-4
電話番号:0982-68-7033

開館時間:午前9時〜午後5時
休館日 :年末年始 12/28〜1/3
HP  : 椎葉村観光協会HP|椎葉民俗芸能博物館

今回は、今もなお継承されている代表的な慣習を3つご紹介します。

【椎葉の伝統 その1】椎葉神楽(しいばかぐら)

神楽(かぐら)とは、五穀豊穣と無病息災を感謝・祈願する神事舞をいい、
椎葉村では毎年11月下旬から12月上旬にかけて26の地域で順番に行われます。

椎葉さん:「椎葉神楽の特徴は、山の暮らしを表現していることです。他地域の神楽は日本神話に由来する演目が中心ですが、
椎葉神楽は『焼畑』『狩猟』を語る演目も多く残されています。」

また、お酒や初穂料を奉納すれば、見物客も氏子となって一緒に楽しむことができるのだそう。

椎葉さん:「椎葉神楽にすっかり魅せられ、毎年、東京から訪れるリピーターもいらっしゃいます。
ぜひみなさんにも神秘的でダイナミックな神楽の舞を生で見て欲しいですね。」

椎葉神楽 面
椎葉神楽を継承している26地区の代表的な面を展示。それぞれの地域によって顔立ちや形相もさまざまです。

椎葉神楽
こちらは鬼神や荒神を舞う時に持つ「面棒」。振り回す、担ぐなど様々な扱いで舞います。

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神楽を舞う場「御神屋(みこうや)」を再現。天井には「雲」と呼ばれる飾り物が下げられます。

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御神屋に下げられる「雲(左)」と「太陽(右)」は神様が居住する天上界を表し、雲には龍が描かれています。

【椎葉の伝統 その2】狩猟

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狩猟のコーナーには猪の剥製も。
ブナのドングリを食べて育った猪は臭みがなく、高級豚の味わいなのだそう。

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こちらは、かつて狩猟の際に着用されていた衣服です。

【椎葉の伝統 その3】焼畑

焼畑の様子

「焼畑農業」は縄文時代から続く古代農法の一つです。
平らな土地が少なく稲作が難しい椎葉村では、山の斜面を焼き、ソバやヒエなどを栽培してきました。
昔は日本全国の山間地で行われていた焼畑ですが、今は日本で椎葉村だけ。
この伝統を継承する取り組みが評価され、2015年に「高千穂峡・椎葉山域」が「世界農業遺産」に認定されました。

伝統を守り、後世に紡ぐために

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このように、椎葉村の生活文化を体験できる椎葉民族芸能博物館。
訪れてみて改めて感じたのは伝統・文化を守り、継承していく難しさです。

椎葉さん:「狩猟も焼畑も椎葉神楽も、現代まで受け継ぐことができたのは、地域の強いつながりがあったからこそ。
その伝統を絶やすことなく今後も継承していくためには、より積極的な地域一体の取り組みが重要です。
この博物館もその一翼として、過去と未来をつなぐ場所にしていきたいです。」

昔から大切に守られてきた椎葉村の伝統文化を、これからも絶やすことなく大切にしていきたいですね。

みなさんも椎葉村にお越しの際は、ぜひ椎葉民族芸能博物館へ足をお運びください。